ほんのはなし

本や文字に関することを書きます。

ホリー・ガーデン

今日は火曜日だけど仕事が休みで、本を読んだり、喫茶店に入ったり、靴を見て過ごしました。

気楽な日。

 

読んだ本は、今日初めて入った本屋で、適当に買った江國香織著『ホリー・ガーデン』。

 

ホリー・ガーデン (新潮文庫)

ホリー・ガーデン (新潮文庫)

 

 『ホリー・ガーデン』良かったなぁ。

江國香織の小説は大人になってからのほうが好きです。

食わず嫌いをしていた時期があるので、読んでいない本がまだまだたくさんあるのです。

恋愛と、恋愛と思っているものにまつわる感情の、淡いきょうふ。すごく気持ちがいいものでもあるのですか。

締まりきっていない蛇口から滴る水をぼんやりと眺めているような感じに近いです。

蛇口を締めなくてもいいんだなと思えるあんしんとおそろしさ。

果歩は自分の世界にひとり溺れていってしまうような女性なのですが、中野君がそういう果歩の精神性みたいなものに惹かれているわけではなく、早く自分が結婚してやらないと象足さんみたいになっちゃうからなと思っているような無邪気な残酷性をもっているところ、こういうのをさらっと書けるのがすごいなと思います。

自分が思っている自分と、他人の目から見る自分は違う。

当たり前のことなのですが、そういうことが描かれている小説は小説らしいなと。

読んでいる瞬間が気持ちいいので、もっとゆっくり読みたかったけど、一気に読んでしまいました。

そして、作中に出てくる尾形亀之助の詩にも興味がわきました。

 

 

あと、一昨日はイアン・マキューアンの『アムステルダム』を読みました。

 

アムステルダム (新潮文庫)

アムステルダム (新潮文庫)

 

 作曲家と編集長が関係がこじれていない頃に、自分が本当に苦しむ前に殺してくれとお互いに頼んで、その後関係性は決定的に変わっても、結果的に約束をお互いに果たすことになる物語の構成など、すごいなぁ。

現代人にとっての本当の苦しみは、恥辱ですね。

『贖罪』を読んだ時も思ったけど、恥辱に陥ることの絶望を書くのがうまい作家です。

戯画化されたストーリーですが、面白かった。

あと、冒頭で亡くなってしまったことがわかるモリーは男たちの記憶の中だけのミューズなのですが、外務大臣の写真の描写からそれをうつした彼女の魅力が伝わるような、ああいう書き方はいいなと思います。

 

 

今はフォークナーの『八月の光』を読んでいます。

思っていたより読みやすいし、今のところ面白い…!

まだ本当に最初のところなんだけど、期待にドキドキしてしまう感じです。